EAGLE8の起源
組成化学式: MgO + KH2PO4 + 5H2O → MgKPO4・6H2O
酸化マグネシウム リン酸二水素カリウム 水 (酸・塩基反応) リン酸カリウムマグネシウム・ 水
放射線を遮蔽し放射性廃棄物を長期間安定して保管する格納容器素材の開発を、アメリカエネルギー省がアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)に要請。
研究の結果1995年頃、試作品”CERAMICRETE"が開発された。
この素材の共同開発を行ったGrancrete社が建築土木用に改良した”GRANCRETE"を商品化。
アメリカ合衆国政府が国際特許を保有し、日本ではEagleVisionが独占販売権を取得し"EAGLE8"として展開している。
EAGLE8の特徴
商品ラインナップ
EAGLE8-Q:
骨材を含まない純粋タイプ。強度・速硬性が高く、滑らかな仕上げや細かい隙間への充填に最適。
EAGLE8-P:
Qタイプに細骨材(珪砂)を約30%配合し、性能と、施工性、仕上がり等をバランスさせた標準タイプ。※珪砂は5,6,7号mix。
EAGLE8-S:
Qタイプに細骨材(珪砂)を約50%配合し、施工性に優れ、特にコテ仕上げが容易。※珪砂は5,6,7号mix。
EAGLE8-H:
耐火性を向上させたタイプ。骨材は含まずより緻密な構造となる為、強度が向上している。また、なめらかな表面となる。
圧縮強度
超速硬・超早強:
打設後3時間で45N/mm2以上
高強度:
打設後28日後で約70N/mm2
曲げ強度
超速硬・超早強:
打設後24時間で6.9N/mm2以上
付着強度
高付着力:
プライマーなしでセメント板に付着。破断面は母材破壊。
対コンクリート → 2.6 − 4.2 N/mm2
対 鋼材 → 1.2 − 3.5 N/mm2
靱性
EAGLE8は靭性(じんせい)を持っています。
発泡スチロールに約5mm厚のEAGLE8を合わせた板に、ブロック(合計約30kg)を載せる実験です。
靱性:
合計30kg載せました。EAGLE8板はかなりたわんでいますが、ひび割れはしていません。
重みによりしなやかに曲がり、重りを外すと元に戻ります。
鉄筋の防錆保護
腐食促進試験:
2010年6月米国土木学会国際技術委員会エジプトカイロ会議にてAlla El-Din Sharakawi博士発表論文より抜粋。
ロリポップ型試験体を塩水に浸け、内部鉄筋と塩水中の電極間に電気を流すことで鉄筋の腐食を促進。
ポルトランドセメントでは5日間で鉄筋が腐食しているのに対し
EAGLE8で作成もしくは保護した試験体では21日後でも腐食は見られませんでした。
RC床版の補強効果
1.概要:
RC床版試験体に静荷重を掛け破断直前状態にし、その下面に薄くEAGLE8を打設。
同様な静荷重を掛け破断直前までの変位量を計測、ひび割れ状況を観測した結果を記録。
⇒EAGLE8が老朽化したRC床版を最小限の時間・費用で修復可能であることの実証実験。
2.試験方法:
2−1 RC床版試験体仕様
・外寸 3000×600×120mm、背筋ピッチ170mm ・配合 表1参照。
2−2 断面修復材
・高機能セラミックEAGLE8-P(水比18%) ・打設厚 約10mm
2−3 試験方法
・曲げ試験 静的曲げ試験法 JIS-A1106準拠(中央点載荷法)とし、100N毎に荷重を掛ける。(画1参照)
・付着試験 建築研究所方式付着試験法。
3.試験結果:
3−1 ひび割れ発生状況
補修前では900N載荷時に約0.2mm幅のひび割れが発生した。
EAGLE8補修後では2180N載荷時にひび割れ発生は確認できたが、目視では確認困難なものであった。
3−2 変位
載荷量に対し変位は補修前後とも比例関係で変位している。但しEAGLE8補修後では2200N載荷時38mmの変位量を示した。
また層間剥離が無く一体化しRC床版では想定できない靱性結果が出た。(図1参照)
3−3 付着
曲げ試験後のEAGLE8とRC試験体との付着結果を表2に示す。
付着箇所は背筋位置(A1〜A4)と無背筋位置(B1〜B4)各4か所で確認した。
本結果では曲げ応力約2000Nに対してもRCとEAGLE8が一体化されている結果を得た。
4.考察:
老朽化RC床版の長寿命化を図る方法としてポリマー系セメント材料による下面増厚で補修をしているが、引張強度性能において十分な性能を得ることはできなかった。
本報告では高機能セラミックEAGLE8でRC床版を補修することにより、約2倍の引張強度と高い靱性性能が確認できた。また曲げ試験後の付着性能結果によってRC躯体と一体化し高強度部材になることが立証できた。
耐震改修・補強材としてのEAGLE8の可能性:
EAGLE8の力学特性は、伸び歪がコンクリートに比べて非常に大きい事が挙げられる
具体的には・・・
壁のように薄い構造体に対しては塗り厚1〜2cm程度でも相当な補強効果が期待される
+
EAGLE8の硬化速度⇒施工性に優れる
↓
型枠不要、補強鉄筋不要の夢が実現。
耐柱のせん断強度の補強について:
日本建築学会「鉄筋コンクリート造建物の靱性保証型耐震設計指針・同解説」によれば、せん断強度発現の要因にアーチ効果が述べられている。アーチ効果はコンクリートの圧縮強度によるものと解説されている。私見によれば、この強度機構は部材に他の材を巻き付けるようなコンパクション効果に因っても上昇する(例えば鋼管巻き)ものであり、EAGLE8を他の繊維補強材と共に用いることにより可能である。
水中でも硬化します
水中のコンクリートブロック上に流し込み実験。
↓
約20分で硬化確認。 1時間経過後12N/mm2の強度を発現。
事例:
水中でも硬化する特性を活かし、干満の差が大きい河口部の護岸工事で採用されました。
水流に洗われない様、簡単な型枠を設置するだけで打設可能。
工期とコストを大幅に削減しました。
海水で混練しても硬化します
海水で混練しても、水道水と同じ強度を発現します。
↓
緊急時には海水で構造物を構築可能。
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